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大人も「あせも」に気をつけよう! 「汗かぶれ」との違いや対処法とは

「あせも」というと子どもの皮膚トラブルのイメージがありますが、近年は夏場の猛暑により大人でも悩まされる人が増えているそうです。

強いかゆみや痛みを伴うこともある「あせも」を防ぐためには、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか? 今回は、長年皮膚の研究や治療に取り組むうるおい皮ふ科クリニック院長の豊田雅彦先生に、そもそものメカニズムから「汗かぶれ」との違い、予防や対策、重症化を防ぐ正しい対処法までを教えてもらいました。

豊田 雅彦 先生

豊田 雅彦 先生

うるおい皮ふ科クリニック院長・医学博士。富山医科薬科大学(現:富山大学)医学部卒業。米国ボストン大学医学皮膚科学教室に留学し、皮膚老化や神経など多彩な研究を行う。富山大学皮膚科講師を経て、2005年千葉県松戸市にうるおい皮ふ科クリニック開業。国際皮膚科学会において、研究と臨床の両部門で単独世界一を受賞した。近著に『新しい皮膚の教科書 医学的に正しいケアと不調改善』(池田書店)。

「あせも」の種類や「汗かぶれ」との違いは?

「あせも(汗疹)」は、汗の通り道が詰まることによって起こる皮膚の炎症です。体温調節のために汗を分泌する「エクリン汗腺」の導管(汗管)が詰まることで汗が皮膚内に溜まり、かゆみや赤みを伴う炎症が生じます。

汗の約99%は水ですが、塩分(ナトリウム)やアンモニア、乳酸、尿素などの成分も含まれており、これらが結晶化したり、皮膚の汚れと混ざったりすることで、汗管が詰まると考えられています。ただし、汗管が詰まる原因は、医学的にまだ完全には解明されていません。

「あせも」の種類は3つ

一口に「あせも」と言っても、詰まりが起きる場所の深さによって、次の3種類に分けられます。

・水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)

汗が角質層内に溜まり、皮膚に小さな透明の水ぶくれができます。かゆみや痛みはほぼなく、主に赤ちゃんに多く見られます。

・紅色汗疹(こうしょくかんしん)

汗が表皮内に溜まることで、周囲にかゆみや赤み、ポツポツとした湿疹ができます。最も一般的なタイプの「あせも」です。

・深在性汗疹(しんざいせいかんしん)

汗が真皮内に溜まるタイプの「あせも」です。日本ではほとんど症例がなく、熱帯地方など高温多湿の環境で見られます。

いずれの「あせも」も汗腺が多く、蒸れやすい部位にできやすい点が特徴です。具体的には、頭皮や首まわり、脇、鼠径部(そけいぶ/太ももの付け根)など。赤ちゃんの場合は、おむつの中も要注意です。ただし、手のひらや足の裏は、汗をかきやすい部位ですが、「あせも」はできません。もしも、手のひらや足の裏に水ぶくれができた場合は、汗疱(かんぽう)という別の皮膚疾患の可能性が高いです。

「あせも」と「汗かぶれ」の違いは?

ほかにも「あせも」と間違えやすい皮膚トラブルとして、「汗かぶれ(汗荒れ)」が挙げられます。汗かぶれは、汗そのものが皮膚に刺激を与えることで起こる症状のことです。特に、乾燥肌の場合は、砂場に水をまいた時のように汗が一気に浸透していくため、かゆみや炎症が起こりやすくなります。

見た目の違いとしては、「あせも」がポツポツと“点状”に湿疹ができるのに対して、「汗かぶれ」は汗に触れる場所全体の“面状”に赤みや炎症が広がります。

「あせも」や「汗かぶれ」は、赤ちゃんや子どもに多く発症すると思われがちですが、大人も注意が必要です。汗を多くかくと、それだけ汗腺が詰まりやすくなるので、多汗症の人や、高温多湿の環境下で働く機会が多い人は、なりやすい傾向にあります。

夏は「汗アレルギー」にも注意!
汗による皮膚トラブルには、「汗アレルギー」もあります。汗に含まれる「ニッケル」などの成分によって金属によるアレルギー反応が起こる症状です。また、アクセサリーなどが皮膚に触れることで発症する「金属かぶれ」も、実は「汗アレルギー」の一種です。汗で金属が溶けて金属イオンとなり、体が異物とみなして免疫反応が起こると、赤みやかゆみ、湿疹、発疹、水ぶくれなどの症状が現れます。原因となる金属は、アレルギーテスト(パッチテスト)や血液検査によって特定できます。

猛暑の「あせも」対策。屋外&自宅でできる予防法

「あせも」の予防には、汗をかいた後の速やかなケアが重要です。汗をかいた後、そのまま放置すると皮膚トラブルを招きやすくなります。また、汗には体温を調節する役割があるので、「あせも」が全身に広がる(=汗管が詰まる)と、体温調節がうまくいかず、熱中症になる危険もあるため注意が必要です。「あせも」ができるのを防ぐために、次のような方法で汗のケアをしましょう。

屋外でできる対策

・ハンカチや汗拭きシートでこまめに拭く

屋外などにいてすぐにシャワーを浴びられない時は、ハンカチや汗拭きシートでこまめに汗を拭きましょう。汗は皮膚をアルカリ性に傾けて、皮膚トラブルの一因となる黄色ブドウ球菌の繁殖を促すため、なるべく早く拭き取ることが大切です。

汗拭きシートは、肌にやさしいものを選びましょう。赤ちゃんの汗を拭く時は、肌にやさしく作られたお尻拭きシートを使うのもおすすめです。

自宅でできる対策

・シャワーや入浴で清潔に保つ

家にいる時やスポーツ施設など、すぐにシャワーを浴びられる状況であれば、サッとシャワーを浴びて汗を流します。40℃前後の高温のシャワーを浴びると、浴室から出た時に再び汗をかいてしまうため、30℃前後の少し冷たいと感じるくらいの温度に設定するのがおすすめです。

シャワーは1日に何度浴びても良いですが、ボディソープの使用は1日1回にとどめましょう。ボディソープを1日に何度も使用すると、皮膚の潤いが奪われて、別の皮膚トラブルを招いてしまう可能性があります。

・シャワーを浴びた後に保湿をする

シャワーの後は、保湿ケアも忘れずに。保湿は、化粧水などで水分を補う「保水」と、クリームやワセリンで蓋をする「保油」の2ステップが基本です。「保油」だけだと、汗が出にくくなったり、熱がこもったりして、皮膚トラブルを招きやすくなってしまいます。スプレータイプのボディローションなら、背中など手の届きにくいところにもサッと吹きかけられて手軽にケアできます。

・寝汗をかきにくい環境づくり

寝汗は、「あせも」が悪化する原因になります。猛暑の時期は、エアコンも活用しながら適度な空調・湿度管理を心掛けましょう。寝汗を防ぐには、冷感素材を使用した敷きパッドなど、寝具を工夫するのも効果的です。

・通気性の良い衣類・肌着を選ぶ

暑い季節の衣類や肌着は、汗を吸いやすい素材を選びましょう。一般的に汗を吸いやすい素材というと綿のイメージがありますが、綿は乾きにくいというデメリットもあり、汗をかいたまま着続けると、かゆみや炎症の原因になります。必ずしも「綿100%」にこだわらず、例えばポリエステル70%、綿30%など化学繊維が多少混ざっていても、速乾性があって肌触りが良いと感じるものを選ぶと良いでしょう。

「あせも」ができてしまったら。正しい対処法とNGな行動

一度「あせも」ができると、かゆみが気になって、集中力が削がれたり、なかなか寝付けなくなったりすることも……。症状の悪化を防ぐためには、どのように対処すれば良いのでしょうか?

かゆみがひどい時の対処法

かゆみが我慢できない時は、保冷剤などで患部を冷やすと症状の緩和が期待できます。保冷剤を直接肌に当てるのは避けて、必ずハンカチやタオルに包んで使用しましょう。また、患部を清潔に保つことも大切です。こまめにシャワーなどで洗い流すことで、汗管の詰まりが軽減されます。

絶対に避けてほしいのは、皮膚のかゆみや湿疹を強い力でかきむしること。「かき壊し」というひどい炎症を起こす可能性があります。「かき壊し」になってしまうと完治が遅れるだけではなく、症状が落ち着いた後に傷跡が残ってしまうことも。最悪の場合、毛包炎(おでき)やとびひ(伝染性膿痂疹/でんせんせいのうかしん)といった感染症を引き起こします。ただ、小さなお子さんはどうしてもかいてしまうので、「爪を短く切る」といったケアも大切です。

「あせも」の薬や病院に行くタイミングは?

最後に薬による治療ですが、「水晶様汗疹」の場合、比較的すぐに治るため薬を使う必要はありません。かゆみを伴う「紅色汗疹」の場合、症状が軽いうちは、市販の外用薬などを使って様子を見ましょう。夏場は軟膏よりもベタつかないクリームが使いやすく、おすすめです。

ステロイド外用薬は市販のものもありますが、使用する時には少し注意が必要です。患部が「とびひ(伝染性膿痂疹)」などの感染症を起こしている時に、ステロイドを使うと症状が悪化する原因になります。かゆみが強い、膿が出ている、長期間治らないなど、何かしらの異変を感じた時は、早めに皮膚科を受診してください。皮膚科では、かゆみ止めの内服薬を処方してもらえることもあります。

夏は、「あせも」や「汗かぶれ」以外にも、日焼けや虫さされ、植物や化粧品によるかぶれなど、皮膚トラブルが非常に増える季節です。“ちょっとおかしいな”と感じたら、自己判断で放置せず、まずは皮膚科医に相談してみてください。

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