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太ももの前側や裏側の張り、痛みが気になる…。原因や手軽にできるストレッチを解説

太ももの悩みを抱える女性のイラスト

「最近、太ももの前側がなんだか張っている…」「裏側が痛い…」と感じることはありませんか? 放っておくと、日常生活に影響が出ることもある太ももの張りや痛み。しかし、適切なストレッチを行うことで、筋肉を柔らかく保ち、張りや痛みの緩和が期待できます。

今回は、太ももの前側や裏側の張り、痛みの原因と、効果的なストレッチ方法を、北里大学医大学院医療系研究科医学専攻主任であり医療衛生学部の高平尚伸教授に教えてもらいました。さらに、ストレッチをより効果的に行うオススメのタイミングや、習慣化するコツについても詳しく解説します。

高平尚伸先生

高平尚伸先生

1964年生まれ。医学博士、日本整形外科学会専門医。専門は、最小侵襲手術(MIS)、スポーツ医学、運動器リハビリテーションなど。整形外科の領域では、はっきりとした治療法が見いだせない不調に対して、早くからセルフケアの重要性に着目。誰にでも簡単にできるストレッチをテレビ番組や動画などで紹介している。著書に『どんなに硬い体も柔らかくなる! 名医が教えるすごいストレッチ』(文響社)。

今すぐできる!太ももの前側や裏側の張り、痛みに効くストレッチ

太ももは、歩く・走る・立ち上がるといった、日常の動作に欠かせない部位です。運動不足や老化などによって太ももの筋肉が硬くなると、関節の動きが制限され、姿勢が崩れて猫背の原因になります。その結果、頭痛や肩こり、腰痛を引き起こすほか、内臓を圧迫して逆流性食道炎のリスクを高める可能性も。また、一つの動作に余計なエネルギーを使うため、疲れやすくなり、ますます体を動かすのが億劫になってしまうという悪循環が生まれます。

そこでおすすめなのが、太ももの筋肉を柔らかくするストレッチ。ここでは、太ももの前側や裏側の張り、痛みに効くストレッチをご紹介します。

なぜ太もものストレッチは必要?始める前に知っておきたいこと

太ももの前にある大腿四頭筋は、体の中でも特に大きな筋肉です。この大腿四頭筋が衰えることで、膝への負担が増し、放置していると変形性膝関節症などにつながる恐れがあります。筋力は加齢とともに自然と低下するため、筋トレに加えてストレッチを続けて意識的に鍛えることが大切です。

一方、太ももの裏にあるハムストリングスも、大腿四頭筋と連動して体を支える重要な筋肉です。これらは「主動筋」と「拮抗筋」という関係にあり、互いにバランスを取りながらスムーズな動作を生み出しています。

「主動筋」と「拮抗筋」の説明イラスト

どちらか一方が硬くなると片方の筋肉の動きを妨げ、余計な力を使うことになり、疲労や不調を招きやすくなります。そのため、ストレッチを通して、前後の筋肉をバランスよく柔軟に保つことが、快適な動きや健康寿命を伸ばすことにつながります。

さらに、筋肉を覆う筋膜(ファシアの一部)まで硬くなると、全身の動きが制限され、より不調を感じやすくなります。そのままにしておくと、筋肉や骨の衰えが進み、サルコペニア(※)や骨粗鬆症につながることもあります。そのため、太ももだけではなく全身を意識したストレッチをすることで、筋膜を伸ばし、筋肉の凝りや違和感などの不調を防ぐことができます。

※加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のこと

悩みに合わせてストレッチ方法を変える? 「OKC」と「CKC」とは
ストレッチには「OKC(開放運動連鎖)」と「CKC(閉鎖運動連鎖)」という考え方があります。OKCとは、手足の先端が地面から離れた状態で、特定の筋肉を集中的に動かす方法です。リハビリなどで、特定の筋肉の回復を促すのに適しています。一方、CKCとは、スクワットのように手足の先端が地面についた状態で、複数の関節や筋肉を同時に使う方法です。日常動作やスポーツに近い動きができるため、効率よく全身を鍛えられます。日常生活で太ももの張りや痛みを防ぎたいときは、CKCを意識したストレッチを取り入れるのがおすすめです。

太ももの裏側の痛みに効くストレッチ

太ももの裏側の痛みを和らげるには、ストレッチで血流を促し、筋肉量を継続的に増やすことが効果的です。ここでは、仕事や家事の合間で手軽にできる、簡単なストレッチを3つご紹介します。無理はせず、「痛気持ちいい」程度を目安に行いましょう。

太ももの裏側の痛みに効くストレッチのイラスト

A.四つん這い状態から行うストレッチ

①両手両脚を床につけてお尻を上げます。
②手の平と足の裏に力を入れて、体全体で三角形をつくります。
③ゆっくりと呼吸をしながら、20〜30秒ポーズを続けます。

B. 椅子に座って行うストレッチ

①椅子に座り、右脚を前に伸ばします。
②右足のつま先を立てます。
③左膝を両手で押さえて、上体を少しずつ前に倒します。
④太ももの裏側がピーンと張っていくのを感じながら、20〜30秒続けます。
⑤左脚も同じようにストレッチします。

C. 立ったまま行うストレッチ

①椅子の背もたれに両手をかけて、両腕が伸びるまで後ろに数歩下がります。
②脚を肩幅に開き、背筋を伸ばしたまま上体を少しずつ前に倒します。
③背中から太ももの裏側にかけて全体を伸ばすように、20〜30秒続けます。

太ももの前側の張りに効くストレッチ

太ももの裏側の痛みを和らげるには、ストレッチで血流を促し、筋肉量を継続的に増やすことが効果的です。ここでは、仕事や家事の合間で手軽にできる、簡単なストレッチを3つご紹介します。無理はせず、「痛気持ちいい」程度を目安に行いましょう。

太ももの前側の張りに効くストレッチのイラスト

A.寝転んで行うストレッチ

①うつ伏せになり、額を床につけます。
②両手は胸の横につき、両脚は腰幅に開きます。

③ 息を吐きながら手のひらで床を押し、胸を持ち上げ、顔は上を向きます。
④ ポーズを保ったまま両膝を曲げて、足首をクロスさせ、さらに両膝を曲げていきます。
⑤ ゆっくりと呼吸をしながら、20〜30秒続けます。

B.座った状態で行うストレッチ

①床やヨガマットの上で正座をします。
②上体を後ろに傾けて、両手を床につきます。
③前ももが伸びるのを感じながら、20〜30秒続けます。

C.立ったまま行うストレッチ

①両脚を揃えてまっすぐに立ちます。
②左脚を大きく前に出し、右脚を後ろに引いての足先を45度外側に向けます。
③息を吐きながら、左膝を90度に曲げ、腰を深く落とします。
④両手を合わせた後、天井方向に上げて、目線を親指に向けます。
⑤20〜30秒続けます。終わったら、脚の位置を入れ替えて同じようにストレッチします。

太ももの前側や裏側の張り、痛み。具体的な症状と原因とは?

太ももに張りや痛みを感じる原因はさまざまです。ここからは、太ももの前側や裏側の張り、痛みを引き起こす主な原因と、具体的な症状についてご紹介します。

太ももの裏側の痛みの原因と具体的な症状

腰の痛みを抱える女性と太ももの痛みに悩む女性のイラスト

坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)

変形性腰椎症や腰椎椎間板ヘルニアなどが原因で、腰からお尻、太ももの裏側にかけて、鋭い痛みやしびれが生じます。また、臀部の梨状筋(りじょうきん)が硬くなると、その下を通る坐骨神経が圧迫され、「梨状筋症候群」として同様の症状が出ることもあります。

ハムストリングス症候群

太ももの裏側にあるハムストリングスに過度な負担がかかることで起こる痛みの総称です。長時間座り続ける生活習慣や、猫背、過度な運動などが原因で、お尻に近い太ももの裏側の付け根に炎症が起き、痛みが出ることがあります。

肉離れ

急な運動などで、筋線維や筋膜が部分的に裂けてしまう状態です。特に、筋肉が収縮したまま引き伸ばされる「エキセントリック収縮」の際に発生しやすく、ズキズキとした強い痛みが特徴です。体を動かすと痛みがさらに強くなります。

太ももの前側の張りの原因と具体的な症状

姿勢の歪みや歩き方の癖

姿勢が崩れると重心がずれ、体を支えるために太ももに余計な力がかかりやすくなります。例えば、ヒールを履き慣れていない人や、お腹が前に出ている人は、重心が前に傾くため、歩くときに太ももの筋肉に大きな負担がかかります。また、膝を曲げたまま歩くなどの癖も、重心のバランスが偏り、太ももの前側の張りの原因になります。

長時間のデスクワークや運動不足

デスクワークなどで長時間座っていたり、運動不足だったりすると血流が悪くなり、太ももの筋肉が衰えやすくなります。その結果、関節に負担がかかり、太ももの前側が張りやすくなってしまいます。

ストレッチで解消!期待できる効果と継続のコツ

就寝前に腕を伸ばすストレッチをする女性のイラスト

太ももの筋力が落ちると、転倒のリスクが高まったり、関節に直接負担がかかって痛みにつながったりすることがあります。そのため、日頃から体を動かす習慣をつけることが大切です。

特に、立って行うストレッチには、実は筋トレの要素も含まれています。体を支えるために前脚の大腿四頭筋が使われ、筋肉を伸ばしながら鍛えることにつながるからです。

ただし、寝る直前にそのようなストレッチをすると、交感神経が活発になり、寝つきが悪くなることもあります。そのため、筋トレを含むストレッチは日中から夕方に行いましょう。就寝前は、お風呂に入って筋肉が温まった状態で、筋肉を伸ばす程度の静的ストレッチを行うのが効果的です。

1日にどのくらい運動すればいい?

運動量の目安は年齢や日々の活動量によって変わりますが、何より大切なのは「座りっぱなしを避けること」です。理想は30分に一度、難しい場合であれば1時間に一度は立ち上がって体を動かすのがおすすめです。小さな動きでも、体には大きな効果があります。

歩数については「6,000〜8,000歩」がよく目安として挙げられますが、量だけでなく「歩き方の質」も重要です。歩幅を広く、やや速めのスピードを意識することで、健康効果がさらに高まります。

また、スポーツなどで体を動かす場合、野球やテニス、ゴルフのように特定の部位に偏って負担がかかるスポーツであれば、左右のバランスを意識した動きを取り入れることがケガの予防につながります。また、左右対称の動きが多い水泳は、体への負担が少なく全身をバランスよく鍛えられるためおすすめです。

太ももの張りや痛みは、放置すると体のバランスや将来の健康にも関わってきます。まずは今日から、無理のない範囲でストレッチや軽い運動を習慣にしてみましょう。続けることで、太ももだけでなく全身の調子も整いやすくなるはずです。

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