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公認スポーツ栄養士が教える、暑い季節を健やかに過ごすための水分補給ガイド

水を飲む男性の画像

暑い季節は、こまめな水分補給が欠かせません。熱中症予防のために「とりあえず水をたくさん飲んでおこう」と心がけている方も多いのではないでしょうか。しかし、水分補給は、ただ水を飲めばいいというものではありません。量やタイミング、飲み物の選び方を意識するだけで、コンディションを整えやすくなり、脱水や熱中症の予防にもつながります。

この記事では、公認スポーツ栄養士の柴田 麗さんに、暑い季節を健やかに過ごすための水分補給の基本と実践のポイントを伺いました。

柴田麗さん

柴田 麗さん

柴田 麗さん

管理栄養士・公認スポーツ栄養士・健康運動指導士。筑波大学大学院修士課程修了後、食品会社に勤務し、サッカーやラグビー、自転車競技ほか、さまざまな競技のトップアスリートからジュニア選手の栄養サポート業務に携わる。退社後の現在は、アスリートの栄養サポート、セミナー講師、執筆活動のほかに専修大学スポーツ研究所客員研究員として活動している。

コンディションを整えるために。知っておきたい水分補給の基本

コップに注がれる水の画像

まずは、体内における水分の役割や脱水のリスクなど、水分補給の基本をご紹介します。

水分が担う体の働きと脱水のリスク

私たちの体は、約60%が水分で構成されています。血液の主成分である水分は酸素や栄養素を全身へ運び、老廃物を尿として排出するほか、発汗による体温調節も担っています。

水分が不足すると、血液量が減少して酸素や栄養素が全身へ行き渡りにくくなり、頭痛や倦怠感といった熱中症のリスクが高くなります。運動中であれば判断力や集中力が低下し、本来のパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。

水分とあわせて取りたい栄養素

私たちが汗をかくとき、水分と同時にミネラルも一緒に失われます。熱中症対策として水分補給を行う際は、意識してミネラルも補給しましょう。

水分とあわせてとるべき栄養素を解説したイラスト

特にナトリウム(塩分)は、体内の水分バランスを保つ重要なミネラルです。また、神経や筋肉の働きを支えるカルシウムやマグネシウム、赤血球中のヘモグロビンの材料となる鉄分も、体の調子を整える働きを担っています。

屋外で長時間作業をする人やスポーツで大量に汗をかく人は、水分とナトリウムに加え、エネルギー源となる糖質も補給することが大切です。

1日にどのくらい水分を補給すればいい?

成人は1日に約2.5Lの水分を失うといわれていますが、そのすべてを飲み物で補う必要はありません。食事に含まれる水分や、体内で作られる「代謝水」があるため、飲み物から摂取する量の目安は1日約1.2Lです。ただし、必要な量は体格や活動量、気温によって異なります。この目安量を上手に取るポイントは、食事や入浴などの活動を始める前に、あらかじめコップ1杯(200〜250mL程度)の飲み物を飲んでおくこと。大量に汗をかいた日は、その分を追加で補給しましょう。

ただし、たくさん汗をかいたあとに水だけを大量に飲み続けると、血液中のナトリウム濃度が薄まり、濃度を保つために水分が足りない状態でも喉の渇きが弱まる「自発的脱水」を招くことがあります。また、一度に大量の水を飲むと、胃に負担がかかり、食欲不振につながることもあります。水分は一度にまとめて飲むのではなく、ミネラルも補いながら、こまめに補給することが大切です。

なお、腎臓病や高血圧などで塩分や水分の摂取制限を受けている人は、自己判断せず、医師の指示に従って補給方法を調整してください。

(コラム)自分に必要な水分量を把握するには?

自分に必要な水分量を把握するために、体のサインを確認する習慣をつけましょう。最も手軽なのが、起床時の尿の色をチェックすることです。尿の色が濃い状態が続いたり、日中、尿の回数が少なかったりする場合は、水分不足の可能性があります。また、普段から運動をする人は、運動前後の体重変化も目安になります。運動後に体重が約2%以上減少している場合は脱水状態が疑われるため、運動中の水分補給量を見直し、運動後も失った分を計画的に補いましょう。

運動後も失った分を計画的に補いましょう。

暑い季節の運動を安全に楽しむための水分補給のポイント

運動中に水を飲む女性の画像

喉の渇きを感じた時点で、すでに軽い脱水が始まっているケースもあります。そのため、暑い季節の運動やレジャーを安全に楽しむときは「喉が渇く前に飲む」ことが基本です。日本スポーツ協会(JSPO)では、運動中は15〜30分ごとに、200〜250mL程度(コップ1杯程度)の水分補給を推奨しています。

体育館などの屋内施設も熱や湿気がこもりやすく注意が必要です。エアコンをつけていても、運動量や室内環境によっては、発汗量が多くなる場合があるので、油断は禁物です。屋外と同様、定期的な水分補給を心がけましょう。

海やプール、キャンプなどのレジャーでは、遊びに夢中になって水分補給を忘れがちです。特に子どもは喉の渇きをうまく自分から伝えられないこともあるため、保護者が時間を決めて声をかけ、水分補給を促すことが大切です。

運動前・運動中・運動後の水分補給方法

運動時の水分補給は、次の3つのフェーズで考えると分かりやすくなります。

運動前・運動中・運動後の水分補給方法を解説したイラスト

・運動前

体を動かす約1時間前からペットボトル1本(500mL)を目安に、こまめに補給します。短時間・軽めの運動であれば、水やお茶でも十分です。

・運動中

発汗量に応じて水分とミネラルをセットで補給します。特に1時間を超える運動や、大量に汗をかく環境では、ナトリウムや糖質を含んだスポーツドリンクが役立ちます。また、飲み物の温度は5〜15℃程度の「やや冷たい状態」が推奨されています。冷たい飲料は飲みやすいだけでなく、体温上昇を抑える手助けをしてくれます。

・運動後

運動前後の体重の差から、失った水分量を確認します。例えば、体重が500g減っていれば、まずは約500mLを目安に水分を補給します。一度に飲むのではなく、食事とあわせて少しずつ補給しましょう。味噌汁やスープ類を活用すると水分と塩分を同時に補えるのでおすすめです。

スポーツドリンクの種類と選び方

ハイポトニック飲料とアイソトニック飲料の違いを解説したイラスト

ハイポトニック飲料は、体液より浸透圧が低く、糖質は2%程度です。発汗時でも水分が吸収されやすいため、運動中の水分補給に適しています。一方、アイソトニック飲料は、安静時の体液に近い浸透圧に調整されています。糖質が4〜8%程度含まれているため、水分とエネルギーを補給しやすく、運動前や運動後の補給に活用できます。

ただし、製品によって推奨されている補給のタイミングが異なるため、商品表示を確認し、運動時間や発汗量、目的に合わせて選ぶといいでしょう。

(コラム)水・スポーツドリンク・経口補水液の使い分け

水・スポーツドリンク・経口補水液は、それぞれの特徴を理解し、適したシーンで使い分けることが大切です。

・水(もしくはお茶):日常生活や発汗量が少ない運動をしたとき
・スポーツドリンク:長時間の運動や大量に汗をかいたとき、激しい運動をしたとき
・経口補水液:下痢や嘔吐、熱中症による軽度から中等度の脱水時の水分・電解質補給

特に注意したいのが、経口補水液の使い方です。最近は熱中症を予防するために飲む人もいますが、経口補水液は脱水状態にある人のために水分と電解質の吸収に配慮された飲料です。そのため、日常的な予防ではなく、「頭痛」「めまい」「強い倦怠感」など、脱水が疑われる場面で活用するようにしましょう。製品によって使用目的が異なるため、熱中症による脱水時に活用できるかパッケージ表示を確認するのもおすすめです。

室内でも油断しない。日常の理想的な水分補給の取り入れ方

部屋で水を飲む女性の画像

熱中症は屋外で起こるイメージがありますが、実は自宅やオフィスなどの室内にもリスクが潜んでいます。

室内での「かくれ脱水」に注意

エアコンを使っていると暑さを感じにくく、「汗をかいていないから大丈夫」と思いがちです。しかし実際には、汗だけではなく、呼吸や皮膚からも水分が失われ続けています。

さらに、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体に熱がこもりやすくなります。窓からの直射日光、調理時の熱気によって部屋の温度が上がると、室内でも気づかないうちに脱水や熱中症につながることがあります。特に高齢者は喉の渇きを感じにくく、子どもは遊びなどに夢中になって水分補給を忘れやすいため、周囲の人が声をかける注意が必要です。

頭痛やめまい、倦怠感、足がつるなどの症状が現れた場合は、脱水や熱中症のサインである可能性があります。まずは涼しい場所への移動や体を冷やすなどの対策をしながら、自力で飲める場合は、経口補水液などで水分と塩分を補給し、早めに回復を図るようにしましょう。

「こまめに飲む」を習慣にする方法

日常生活では、「何分おきに飲む」と時間で管理するよりも、起床後、食事の前後、外出前後、入浴前後、就寝前など、活動の節目を水分補給のタイミングとして決めておくと習慣化しやすくなります。

日常生活で水分を補給するタイミングを解説したイラスト

飲むタイミングに加えて、飲み物の選び方にも工夫が必要です。コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲み物も水分補給になりますが、カフェインの取り過ぎを避けるため、水やカフェインが入っていない麦茶などもバランスよく取り入れるのがおすすめです。また、アルコールにもカフェインと同様に利尿作用があるため、飲み過ぎには注意しましょう。特に飲酒時は、水や炭酸水なども一緒に飲み、食事も組み合わせて脱水のリスクを抑えましょう。
野菜や果物、ゼリー、スープなど、水分を多く含む食品も補給に役立ちます。ただし、塩分や脂質の多いラーメンのスープなどは、日常的な水分補給の代わりにせず、取り過ぎに注意しましょう。

さらに、ボトルやタンブラーを目につく場所に置いたり、アラームや記録アプリを活用したりするのもひとつの方法です。自分に合った方法で無理なく水分補給を習慣にすれば、毎日のコンディションを整えることにつながります。

暑い時期のコンディションを整えるために大切なのは、「たくさん飲むこと」ではなく、「自分の活動量や発汗量に合わせて必要なタイミングで補給すること」です。今回ご紹介したポイントを参考に、日常生活や運動、レジャーなど、それぞれのシーンに合わせた水分補給を心がけ、毎日を元気に乗りきりましょう。

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